ボルネオゾウはアジアゾウの仲間であることはわかっていますが、タイやインドのゾウに比して体が小さい、尾が長い、正面から見ると頭より肩が高い、牙がまっすぐなど外見がかなり変わっています。群の中に複数のオスがいることもあります、もっともこれは生息地が狭くなった、通常のルートが使えないなどの理由で、一時的に一緒にいるのかもしれません。大陸から渡ってきた、元々ボルネオにいた、ジャワの王様から贈られたなど、ルーツに関してもさまざまな説があります。ジャワゾウだとすると、絶滅してしまったジャワゾウの子孫(!?)になります。
ボルネオゾウは島の北東部に1400~2000頭いると推定されています。草や木(葉や実)を食べ、糞をして、群で移動しています。いろいろな植物の種まきをしていることになります。移動ルートは昔から大体同じですが、とくにキナバタンガン川を渡る地点は、子連れでも渡れるところを選ぶのでほぼ決まっています。
この10年ほどでサバ州ではアブラヤシのプランテーションが大規模に開発され河岸にも迫る勢いです。ゾウがいつものように移動するとアブラヤシのプランテーションも通ることになり、アブラヤシの葉や新芽、実を食べてしまいます。集団で食べるのでプランテーションにとっては大きな被害、しかもゾウがいるところでは危なくて人間は作業ができません。人間が力づくで追い払うので、ゾウはやけどやケガをしたり、ときには死んでしまうこともあります。また、鹿やいのししなどを狩るための罠に子ゾウがかかって大けがをすることもあります。こういった人間とゾウのトラブルは年々増えています。
ゾウがプランテーションや村に入ると、住民から野生生物局に「何とかしてくれ」という連絡が入ります。鐘や空気砲で大きな音を立てると出て行くこともありますが、何日間も居座っているときは、レンジャーたちはゾウに麻酔をかけて捕獲し、保護区まで車に載せて運び、そこで森に返します。問題はゾウを戻せる森がだんだんなくなってきていること(たとえば植林を始めた森、せっかく植えてもゾウが食べてしまうので禁止)。
今BCTジャパンが考えている対策は2つ。ひとつは、ゾウが川沿いに移動できるように「緑の回廊」をつくること。2つめは、ゾウを一時的に収容できるレスキューセンターをつくること。今は麻酔の関係もあって捕獲から森に戻すまで1~2日でやらなくてはいけないのですが、レスキューセンターがあれば遠くの森に戻すこともできます。 人間から見ればゾウは害獣ですが、ゾウにしてみれば昔と同じことをしているだけです。環境を変えてしまった人間が何とかしないといけないですね。