ボルネオレポート

インターン近藤さんのボルネオレポート

公益財団法人損保ジャパン日本興亜環境財団のCSOラーニング制度を活用して2018年6月から半年間、インターンをしてくれた近藤巧さん(大学3年生)がインターン期間終了間際の11月末にボルネオに渡航され、長編レポートを書いてくれました!

ボルネオ保全トラスト・ジャパンで2018年1月までインターンしていました近藤です。今回はボルネオ島についてイメージを持っていただけるよう、ボルネオ島渡航記を書きたいと思います。

飛行機から見えた広大なプランテーション、熱帯雨林での動物たちとの出会い、現地の様子などお伝えできればと思います!

目次

1. ボルネオ島とは
2. 訪問の目的
3. ボルネオ島での日記(DAY1〜DAY4)
4. 考えたことまとめ

ボルネオ島とは

さる2018年11月22日から25日、私はボルネオ島のサバ州に初めて渡航しました。ボルネオ島とは東南アジアの島のひとつで、別名カリマンタン島とも呼ばれています。島の北側、マレーシア領をボルネオ島と呼びます。ボルネオ島の中でも、北に位置するのがサバ州です。面積はほぼ北海道と同じくらいです。(詳しくはこちら:3分でわかるボルネオ
今回、私はサバ州のコタキナバル、サンダカン、キナバタンガンという3カ所に行きました。

簡単に場所の特徴を説明すると、

・コタキナバル:島の中の都会。通称KK。
・サンダカン:パームのプランテーションの街。一部は保護区(ラボック・ベイ)。
・キナバタンガン:キナバタンガン川という大きな川が流れている。川沿いが保護区で、そこに野生動物たち(ボルネオゾウ、オランウータン等)が住んでいる。いわゆる「ボルネオ島」のイメージ風景が広がっている場所。

ちなみに、ボルネオ島というと、「島全体がジャングル」みたいなイメージを持たれると思います。自分もそうでした。実際は、島の面積の割にジャングルは少ないです。なるほど、それが問題なのだな、ということをこれから書きたいと思います。

訪問の目的

今回の渡航の目的は、「もし実際にボルネオ島のスタディツアーを行うなら、どうすれば一番学びが深まるのか?」ということを学生の視点から提案するためです。そのため、「どういうテーマ(疑問や観点)を持ちながら、この場所を訪れると有意義な時間になるか」を考えながら、プランテーション、動物保護施設、熱帯雨林・キナバタンガン川などのスタディーツアーで行きそうな場所を訪問しました。

スケジュールは以下のようでした。

DAY1:コタキナバル到着
・ロッカウィ動物園見学

DAY2:コタキナバル → サンダカンへ移動
・オランウータン・リハビリテーションセンター見学
・ボルネオサンベアー・コンサベーションセンター見学
・レインフォレスト・ディスカバリーセンター見学

DAY3:サンダカン → キナバタンガン へ移動
・キナバタンガン川クルーズ
・熱帯林の中を探検

DAY4:キナバタンガン川クルーズ
・ラボックベイ見学
・サンダカン空港周辺散策

ボルネオ島日記

それでは、ボルネオ島での様子・発見を日記形式で書いていきます。

DAY1:ロッカウィ動物園 

 11月22日昼、ボルネオ島のコタキナバル空港に到着しました。さすがに暑いです。
空港で待ち合わせていた現地の方とお会いし、そこから直ぐにロッカウィ動物園(Lok Kawi Wildlife Park)へ向かいます。ロッカウィ動物園は、サバ州の野生動物を保護している施設です。サイチョウ、オランウータン、ボルネオゾウ、テングザルetc、広い園内にたくさんの動物がいます。見たこともない動物たち(牛・馬・ロバ・羊の融合みたいな動物)がたくさんいたこと、オウムが何十匹もいる檻など、非常に面白い場所でした。

ロッカウィ動物園が、スタディーツアー的に何が重要なのかというと、「動物福祉の観点から問題があるのでは?」という議論があることです。
例えば、最近このようなニュースや、こんなニュースになっています。

動物の専門家でない人が、動物福祉の問題を正確に判断するのは不可能です。しかし、「本当に動物福祉の問題があるのだろうか?あるとしたらどこだろう?」と疑問を持ちながら訪問することは意味があると感じました。実際に見た限りでは問題を感じませんでしたが…。

実際に、そんな疑問を持って印象に残ったのは、ボルネオゾウとオランウータンです。

ボルネオゾウは、この日、やたら興奮していました。「パオーン」という声を鳴らして柵の中で走り回っています。猛烈ダッシュしたり、水をかけてきたり。何だか怒っているように見えました。たまたま調子が悪かったのか、それとも調子が良すぎたのか、普通なのか、素人の自分には分かりません。「動物福祉の話と関係があるのだろうか?」と疑問を持ちました。

一方、オランウータンは無気力そう。ロッジの下の日陰でじっとしています。しばらく見ていると、オランウータンが何かを見つめていることに気づきました。工事の様子です。

オランウータンの柵の隣で工事が行われていたのですが、その工事の溶接作業(火が出てバチバチッてなるやつ)をじっと眺めていました。しばらくすると飽きたのか、場所を移動して、じっと動かなくなりました。あまり元気そうには感じませんでしたが、あれは普通なのかもしれません。


 

「ロッカウィ動物園は、動物福祉の問題が議論されている」という事前知識があったことで、深みのある(と思える)訪問になりました。

動物園の後は、コタキナバルの市内のホテルに移動です。ホテル周りには露店が出ていたり、とても賑やかな場所でした。隣にはセブンイレブンもありました。

DAY2:コタキナバル → サンダカン へ移動
・オランウータン・リハビリテーションセンター見学
・ボルネオサンベアー・コンサベーションセンター見学
・レインフォレスト・ディスカバリーセンター見学

この日は早朝に起きて、サンダカン行きの飛行機に乗りました。飛行機は、小型のものです。

約50分間のフライトです。飛行機の窓から地上を眺めていると、20分後くらいでしょうか、広大なプランテーションが現れます。目で見えるくらいハッキリと区画分けされています。「プランテーションは本当にあったんだな」と驚きました。

そうこうして、サンダカン空港に到着しました。サンダカン空港は典型的な地方空港です。タクシーの運転手さんと交渉して、オランウータン・リハビリテーションセンターへ向かいます。

オランウータン・リハビリテーションセンターは、森林伐採の際に生息地を失ったオランウータンを保護し、再び森での生活に戻すための施設です。

オランウータン・リハビリテーションの目の前には、ボルネオサンベアー・コンサベーションセンターという保護施設があります。こちらはマレーグマを保護している施設です。どちらも欧米の観光客の方々がたくさん来ていました。

この2つの施設から、歩いて30分のところにレインフォレスト・ディスカバリーセンター(RDC)があります。ここはボルネオの原生林が残った環境教育センターです。地上25メートルの高さのキャノピーウオークが有名です。

RDCの中を歩いていると、だんだんと気温が下がってきます。直感で雨が来ると感じ、近くの宿まで猛ダッシュ。予想した通り、スコールがやってきました。約1時間半の間、台風のごとき風雨が吹き荒れました。

スコールの間、たまたま宿の待合所で居合わせたイギリス人のご夫婦とのお話が盛り上がりました。前日の動物園の話をしたら、とても興味深く聴いていただけました。やはり経験を言葉にするというのが大切で、これはスタディーツアーでも同様だと感じました。

この日は色々な保護施設を見たのですが、結局一番印象に残ったのは、飛行機から見えた広大なプランテーションと偶然スコールで居合わせたご夫婦との会話でした。

DAY3
この日はサンダカンからキナバタンガンへ移動しました。早朝、車に揺られること約3時間、キナバタンガンへ向かいます。

道中はパームヤシばかり。丘の上から見ると地平線の彼方までパームヤシでした。ここで世界中のパーム油が作られているんだな、と感じずに入られませんでした。

写真の景色が3時間続きます。

昼過ぎごろ、キナバタンガンに到着します。

宿泊先は川沿いの静かなロッジでした。

夕方、ついにキナバタンガン川のクルーズに乗り出します。

出発してすぐに野生のオランウータンを発見しました!(写真では真ん中あたり)

保護区の向こうに見えるアブラヤシが、保護区の「特殊性」を強調しているように感じました。

クルーズを続けると、幸運なことにボルネオゾウの一行に遭遇しました!20頭はいるのではないかと思われる群れです。ムシャムシャと草を食べています。目の前で野生のボルネオゾウを見れて、感激してしまいました。

興奮冷めぬままクルーズは終了です。

さて、夜になりました。ガイドのおじさんが「さあ、ジャングルツアー行くか」と腰をあげます。近所のコンビニに行くかのような軽さです。自分も少し軽い気持ちで熱帯林に入ります。約1時間の散歩ですが、「生物多様性とは何か」を全身で感じ取った時間になりました。

ゲコゲコとカエルのなく声、謎の鳥の鳴き声が夜の熱帯雨林に響きます。珍しい昆虫や小動物、眠っている鳥など、現地のガイドさんは真っ暗闇の中から懐中電灯の光だけで見つけ出します。自分は一歩一歩、恐る恐る進むのだけで精一杯です。途中、ボルネオゾウが通った獣道もありました。


真っ暗でした。

初めは珍しい虫やら動物を見て喜んでいた自分ですが、巨大なカマキリや巨大ヒル、前を横切るサソリくんたちに出会い、だんだん恐ろしくなってきます。なんだか体が痒いなあ、と思って見ると、大きなヒルがたくさんへばり付いています。もう半分パニックです。恐怖で懐中電灯の光が震えます。恐怖の中ひたすら歩きます。歩くこと30分、ついにロッジに帰還しました。

熱帯雨林の散策では、ボルネオ島に「これが生物多様性だ!」とど突かれた気持ちになりました。当分忘れられない思い出ができました。

DAY4
早朝、再度キナバタンガン川のリバークルーズに乗り出します。この日は前日に行かなかった方向に向けて出発です。テングサルの一向、シルバーモンキーの群れに出会います。しばらく移動をし、収穫がないかと思われたその時、ワニが現れました。目の前にヌッと登場し、すぐに消えてしまいました。一瞬の出来事で写真が撮れませんでした。

またしばらくすると、岸沿いに何かがいます。近づくと、眠っているワニでした。舟漕ぎのおじさんは、どんどん近づいていきます。ほんの一メートル手前くらいまで近づいた時、ボートが木の枝にあたりカサっと音を立てました。閉じていたワニの目がキッと見開いて、バシャバシャと川に逃げ込んでしまいました。ほんの一瞬の出来事でした。


眠っているワニ

キナバタンガンでは、ボルネオの生物多様性を満喫しました。体験として衝撃的で、これは実際に行ってみないと伝えきれない興奮があります。こんな世界が実在していたのか!と言う驚きが正直な感想です。東京に住んでいるだけでは絶対に知らない世界が、そこにありました。

さて、キナバタンガンともお別れです。サンダカンに向けて出発しました。また一面アブラヤシの道を駆け抜けます。途中、アブラヤシの果房と一緒に写真を撮りました。

サンダカン空港に到着してから、ラボック・ベイという場所に向かいました。ここはテングザルとシルバーモンキーが住む保護区です。京都の嵐山みたいな場所です。

実際に行くと、テングザルが目の前にいて驚きます。テングザルはどこか人間に似ています。スタッフの方は謎の鳴き声を発して、テングザルを集めてくれました。「スタッフをやっていると、テングザルと話せるようになるんだよ。」と言っていました。

さて、長いことラボック・ベイで時間を過ごし、サンダカン空港に戻ります。まだフライトまでしばらく時間があったので、近くのお店まで歩きます。スーパーマーケットが立ち並ぶ市場がありました。某鶏肉ファストフード店もありました。


「ミー」という焼きそばを食べました

あっという間のボルネオ渡航でした。コタキナバルに帰る飛行機に乗ります。

考えたこと

ボルネオ島に実際に行って思ったこと、「有意義なスタディーツアーにする為には」という問いの自分なりの回答をまとめます。

ボルネオ島に実際に行って思ったことは3つです。ひとつは、パーム油プランテーションの広大さ。「パーム油のせいで森林が失われている」という教科書的な一般論は知っていたのですが、実際に行って見ると実感が湧きます。一面パーム油プランテーションの中に、ポツンとわずかに保護区がある、というのが現状を知りました。

2つ目は、ボルネオの生物多様性の意味。これは実際に行って、色々な生き物をこの目で見て、感じたことです。「生物多様性」という言葉はボルネオ渡航前にも口にしていたのですが、言葉に実感が伴うようになりました。

3つ目は、ボルネオ保全トラスト・ジャパンの活動の非凡さです。今回の訪問では実際にボルネオ島に行き、熱帯雨林が失われつつある現状を目の当たりにしました。私はショックを受けるとともに、無力感を感じずに入られませんでした。熱帯雨林やパームプランテーションは、自分が何かするには、あまりにも広大に見えたからです。

こうした思いを抱えて、改めてBCTJの活動を考えると、驚嘆せずに入られませんでした。例えば、緑の回廊プロジェクトは、出来上がったプロジェクトだけ見れば、簡単そうに感じます。保護区の間をつなぐ、というアイデアも非常に分かりやすいです。

しかし、現場を見た今、プロジェクトを計画し、実行に移すのには並々ならない苦労があったことが推測できます。その困難な課題をリーダーシップを持って実行した方々がいるという事実を前にして、先人の偉大さを感じずに入られません。

実際の世界で現状を変える、「make a difference」するというのは相当に難しいことです。自分の無力さ、先人の偉大さを知ったボルネオ渡航になりました。

さて、今回の目的だった「有意義なスタディーツアーするためにはどうすれば良いか」についても、考えたことをまとめておきます。

ボルネオ渡航を通して思った「有意義なスタディツアー」は、次の行動につながるスタディーツアーです。「次の行動につながる」とは、帰国した後にさらに興味が出て調べたくなる、今まで興味がないと思っていた分野への興味が開ける、自分が出来ることを現実的に考えるようになる等、様々考えられます。

「次の行動につながる」スタディーツアーにするには、以下の3つの要素が重要ではないかという仮説を得ました。

1.ニュース等で事前知識を得て、それを検証するつもりで訪問先を訪ねること
2.現地で感情を揺さぶられること・感動すること・衝撃を受けること
3.旅先で人と話すこと、感じたことを言葉にすること

もちろん、現地に行くと経験自体が、大きな価値があること思います。

自分の場合、短い期間でしたがボルネオに渡航して本当に良かったと思っています。大学で学んでいること、ボルネオ保全トラスト・ジャパンの取り組み、生物への興味や関心、渡航前の「日常」への見方が大きく変わり、新たな興味関心も湧いてきました。

このレポートでボルネオ島の様子・ボルネオ島に行って私が考えたことが少しでも伝われば、大変嬉しく思います。これからも、ボルネオ島や環境に対して何らかの貢献ができるよう更なる精進していきたいと思います。

インターン 近藤巧

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