野生動物の声なき声に耳をすます。

すみかをうばわれる動物たち


キナバタンガン川流域は過去数十年間で急激にアブラヤシプランテーション(大規模農園)の開発が進みました。広大な熱帯雨林で悠々と暮らしていた野生動物たちは、周囲をプランテーションに囲まれた窮屈な森で暮らしていかなければならなくなりました。

アブラヤシプランテーションの中を歩くボルネオゾウの群れ写真:アブラヤシプランテーションの中を歩くボルネオゾウの群れ

せまく小さな森での暮らしではパートナーを見つけるのも難しくなり、群れも小さくなってゆき、遺伝子の多様性も失われていきます。

国際自然保護連合によるとボルネオオランウータンの数は過去60年間で60%以上も減少し、2025年までに50,000人以下になると考えられています。ボルネオゾウは群れでプランテーションに入り込むとアブラヤシに大きな被害が及ぶため現地では日本のシカやイノシシのように「害獣」と認識され、穴を掘って落としたり、銃や毒で殺される悲惨な事件も起こっています。

写真:毒殺された母ゾウをゆり起こそうとする仔ゾウ

アブラヤシから採れるのは『パーム油』という植物油です。ボルネオ島のサバ州は1980年代からアブラヤシプランテーションの大規模な開発を進め、パーム油を輸出することで経済的に発展してきました。日本は年間約60万トンのパーム油をマレーシアから輸入しています。

わたしたち日本人も、実は1人あたり年間約5kgものパーム油を使っているのです。

「え、パーム油なんて見たことも食べたこともないけど?」

というのは大きな誤解。スーパーやコンビニエンスストアで買うお菓子やパン、冷凍食品、化粧品、洗剤、ペットフードなど、パーム油は毎日の生活に欠かせないものの材料として使われます。わたしたちの生活とパーム油とは、いまや切っても切れない関係なのです。
 
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