プロジェクト情報

BES井戸掘りプロジェクト報告

BESでゾウのための井戸掘りを2年ぶりに再スタート
経験を踏まえ掘削方法をバージョンアップ

*本プロジェクトは三井物産環境基金助成事業です

BCTJはBES(ボルネオゾウ保護区)での安定的な水供給を目的として、2020年3月に井戸掘りプロジェクトをスタートしました。しかし直後に新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、マレーシアでも厳しいロックダウン。現地スタッフによる作業も続けられず、組み立てた井戸のやぐらは大雨で壊れたまま放置されました。

マレーシアの入国禁止が2022年5月に解かれ、2022年7月11~21日、井戸掘削の専門家チーム(河西陽さん、村田康行さん、石井国義さん)と森井理事が現地に向かいました。

今回の出張の目的は「やぐらを再度組んで井戸掘りを再開させること」です。10日間の出張ですが成田からボルネオ島サバ州への国際直行便は休止、国内線も減便、帰国前のPCR検査などを考慮すると実際の作業日は7日間しかありません。

前回の経験を踏まえ、掘削方法を河西さんが考案した「河西式上総掘り」に変更(井戸やぐら、肥後車、掘り鉄管の改良)し、BESのスタッフ中心にテキストや動画を利用した技術移転(コロナの状況によっては、日本からはもちろん現地の協力団体からもBESに行けなくなるため)を行い、BESに自家発電機やポンプ、電動ドリルなどを基本的な設備を、自前で修理可能なもので備えることにしました。

上総掘りは、掘り鉄管を使って人力で井戸を掘る伝統的な方法です。掘り手の負担を軽減するために、掘り鉄管とハネギ(竹で作ったスプリング)を利用します。井戸孔が深くなってきたときは鉄管に4mほどの竹ひごを何本も繋いで掘り進めます。つないだ竹ひごは折れやすいため、肥後車に巻いておきます。

竹ひご、ハネギ、肥後車が効率的に働くようにやぐらを組んだあとはひたすら根気よく掘り続け、掘りくずを回収し、また掘り続ける作業を繰り返します。

7月12日にBESへ到着しBCTサバ事務局のジョセフィンさんとジミーさん、BESスタッフのティンジュさん、フィリピさん、クラウディーノさん、BCTJ現地スタッフの岸優子さん、通訳のジェイソンさんらと合流し、打ち合わせと資材や現場を確認します。事前に動画やテキストを見てもらっていたため、みなさん理解が早くスムーズに進みました。

7月13日からは、やぐらを組むために現地の協力団体KOPELから職人の2名も加わりました。

井戸用地

まずはやぐらの縦の支柱を立て、下から組んでいきます。毎晩の降雨でぬかるみ平らではない地面の平衡を保つため、低い方に角材をかませていきます。やぐらの上段を組むときは河西さんらが両手両足を駆使し、その様子を現地スタッフから「まるでモンキーだ」と称賛されていました。

支柱を立てる

井戸掘りの現場は崖下に位置しているため風が抜けず、容赦なく照りつける日差しも相まってとにかく暑く、作業も順調には進みません。やぐらにハネギを設置する作業は手こずりました。ハネギの中心が井戸孔の真上に来ないといけないのですが、人が乗っていると重みで重みでやぐらがかしいでしまうので、何度も位置を調整しました。現地スタッフはカンポン(村)育ちで日頃から大工仕事をこなしているためとても器用です。言葉が通じなくても、専門家の動きから状況を把握し、フォローに回ります。

やぐらを組む
ハネギをのせる
やぐら全景

やぐら完成後は竹を6つに割って節を取り、厚みと幅を揃えて竹ひごを作ります。竹ひごをつなぐにはヒゴ輪(鉄輪)とスベル(竹の楔)を使います。太さも厚みも異なる竹を、最終的にヒゴ輪に通るサイズに合わせなくてはいけない繊細な作業です。日本には竹を割る、厚みを揃える、削るなどそれぞれ専用の道具がありますが、現地スタッフは全てパランという山刀ひとつで行っていました。

竹ひごをつくる

竹ひごのあとは肥後車です。長さ2.4mの木材を放射線状に組み合わせ、固定していきます。同じものを2つ作り、一定の間隔をあけて水車状の装置を製作りました。木材は2×4のものを用意したのですが、それでも固くて重く、釘を打つと割れてきてしまいました。急遽ネジに変更して作業を続けます。肥後車はスペースのある崖上でつくり、崖下までみんなで運んで設置しました。

肥後車を運ぶ

次に、掘り鉄管など道具を確認します。鉄製の道具はコロナ禍で来られなかった2年間は現地で保管してもらっていたものです。事前に写真で確認し知ってはいたのですが、実物を見るとすごいサビです。取り外しできるはずのパーツも全く外れません。人海戦術でパーツを外し、錆び取り薬剤やワイヤーブラシ、電動サンダーを駆使してやっと使える状態にしました。

さびついた鉄管をはずす

作業中に何度も資材や道具が足りなくなって毎日ハードウェアショップに通い続け、17日にようやく井戸掘りができる体制に。

井戸孔に道具類が落ちてしまうと致命的なので、道具類にはあらかじめロープをつけておきます。掘る時のハンドルの位置調整、ハネギが正常に動いているか、掘りくずは定期的に取り出すことなどの作業手順を河西氏がティンジュさんに丁寧に伝授します。通訳のジェイソンさんも上総掘りの仕組みをよく理解しており、アシストが完璧でした。

最終日の18日、道具の確認や今後の打ち合わせをしていたら、なんと竹ひごが折れる事故が発生。今回使用した竹はまだ若く脆いのが原因です。新しく竹ひごをつなぎ、ひご輪とスベルで固定し、ビニールテープで巻いて補強しました。竹ひごは肥後車に巻いたままなので、余計に時間がかかりましたが、日本へ帰った後もこういう事態が起きないともかぎりません。思わぬ実地練習となりました。無事に作業が続けられるよう祈りながら現地を離れました。

BESからコタキナバルに戻り、帰国にそなえてドキドキしながらPCR検査を受けましたが幸い全員が陰性。21日の朝、無事に帰国しました。

現在、BCTスタッフが毎日のゾウの世話の後に井戸掘り作業を続けています。日本から遠く離れた場所ですが、チャットアプリで雨で作業できなかった日のことや道具の不具合が起こった様子など、いろいろと知らせてくれます。硬い層にあたって難儀しているようですが、頑張ってほしいです。水が出たら、仕上げ作業に河西氏を含め日本からスタッフが現地へ向かう予定です。

井戸堀り作業

専門家のみなさま、暑い中をありがとうございました。BCT事務局は資材調達やSWDとの調整、現地スタッフは毎日の仕事に加えての井戸掘り作業継続、本当にありがとうございました。また、ジェイソンさんは単に通訳するだけでなく、ご自身の経験も踏まえての実践的なアドバイスをいただきとても助かりました。

井戸掘りプロジェクト担当:森井

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