いのちをつなぐ橋をかける。

吊り橋プロジェクト

吊り橋がボルネオオランウータンのいのちをつなぐ

キナバタンガン川でオランウータンの生態調査を行なっていた環境NGO HUTANは困っていました。プランテーションの拡大によって小さな森に閉じ込められているオランウータンを川向こうの大きな森に移動させる良い手段がみつからないのです。

水が苦手で、ワニの怖さも知っているオランウータンは小さな支流も渡ることができません。昔は川を覆うような背の高い木があり、彼らも自由に行き来できていました。しかし巨木は人間の手によって伐採されてしまい、いまはそれもできません。

キナバタンガン川流域で野生動物の生息域調査を行った結果を見ながら「ここに橋があれば、オランウータンの生息域を広げることができる」と判断された場所に橋を架けるため、HUTANは試行錯誤を続けていました。

ロープで作ったシンプルな仕掛けの橋は失敗に終わってしまいます。困ったHUTANの担当者が日本の動物園で出会ったのが、中古の消防ホースで楽しそうに遊ぶオランウータンやチンパンジーたちでした。

「あの素材なら上手くいくかも」

2008年、オランウータンの生態を熟知する水品理事と黒鳥理事を中心に他の動物園関係者も協力してプロジェクトがスタート。動物園内で試作を重ね、三井物産環境基金を獲得し、第1号の吊り橋がキナバタンガン川支流のメナンゴール川に架けられました。その後、新たな助成金(地球環境基金)を獲得したことでプロジェクトの財政も安定。全部で6本の吊り橋を架けました。

写真:吊り橋は観光客への啓発活動にも一役買っています

オランウータンは慎重な性格です。長い間観察を続けても、なかなかを吊り橋を渡った形跡は見られませんでした。「いつか撮影できればいいね」と淡い期待をこめ、自動撮影カメラを仕掛けて朗報を待ちました。

ついに撮影された、橋を渡るオランウータン

2010年2月に初めてオランウータンが1号橋を渡るシーンが自動撮影カメラで撮影されました。そして2012年には、たまたま1号橋を訪れた京都大学霊長類研究所(当時)の大谷洋介さんが決定的な瞬間の撮影に成功したのです。

吊り橋を渡るオランウータン

吊り橋を渡るオランウータン

また2016年には、第6号橋で遊ぶ母子のオランウータンも撮影されています。橋を渡り切る様子までは確認できませんでしたが、ロープで戯れるオランウータンの子供の様子ははっきりと映っていました。近いうちに橋を渡るオランウータンの様子が見られるに違いありません。

吊り橋プロジェクト報告書

1号橋から6号橋の詳細はこちらの報告書をお読みください。